”偉大なゲームデザイナーたちが持つ偉大な映画監督たちと同じ能力”GAME・SCOPE・SIZEリミックスバージョン

Nostalghia

 ちょっと前に海外サイト1UPに上がった「6人の偉大なゲームデザイナーたちが持つ偉大な映画監督たちと同じ能力」という企画がGIGAZONEにて翻訳されたものがあったが、これも映画を目指したビデオゲームの文化成熟のたまものということでこんな比較も可能に・・・かと思いきや今よくよく読んでみるとけっこう適当。

 映画にも詳しい人ならどう適当なのかとっくに分かってると思うけど、同じ能力って作品の雰囲気やものづくりのスタンスで一致しているということなのか、それともジャンルの慣例を越えていく仕事をしたこと同じ能力といってるのかがごっちゃになってる。モリニューとコッポラが「結果を恐れず新しい領域に踏み出す能力」から同じ能力ってその面で一緒にしちゃダメだろ!モリニューもコッポラも他に例えられやすいクリエイターいるだろ!

 ってことでまあ元々が話半分の適当企画とはいえ、やはり興味深いものはある。それなりに映画もゲームも多く触れていると確かに触感や印象が結果として似通っているのは数多く存在する。というわけで今回はオレ個人の感想でチョイスした「偉大なゲームデザイナーたちが持つ偉大な映画監督たちと同じ能力」です。

 基本は作品の空気感やスタンス、作家としてのバイオグラフィなどが近似してるのを選んでみるけど、やっぱそこまで厳密ではなく話半分な感じの、まあ気楽な適当企画ということで。とりあえず名の知れた日本人クリエイターのみになってます。

1・「ICO」上田文人と「惑星ソラリス」「ノスタルジア」アンドレイ・タルコフスキー、または「ミツバチのささやき」ビクトル・エリセ

寡作だが、極限まで削ぎ落し、そこで生まれる作品のエモーションを突き詰める能力

 

 上田文人作品「ICO」「ワンダと巨像」というのは、「FF10」「MGS2」を代表に映画に近づくにつれ世界観や状況が説明過多になってくる時代のゲームの時代に対して、他に比較できないほどに世界観の説明を廃し、プレイヤーの感情を喚起させるアクション・アドベンチャーとなっている。

 映画にしろゲームにしろ作品が成立するに当たって様々な要素で構成されているが、実際には説明過多であったり分かりやすくしすぎたりすることによって作品を理解しやすくする一方で、観賞中の客やプレイヤー自身のエモーションを喚起させられる側面というのは弱くなってしまう。それはエモーションでさえも「ここで悲しませるシーン」「ここで怒らせるシーン」と感情の演出をわかりやすく説明的にしてしまうからだ。

 どのような映画体験やゲーム体験からもわずかながら感じられる、そうしたエモーションの面を全面的に作品にする場合、それはプレイヤー自身の感情や体験それ自体を喚起させるために世界観の説明などは最小限になり、詩的な映像や表現を突き詰めることになる。

 それゆえに一見、”難解”と称されることが多々だが、その作品は他に比較できるものが考えられないほどの感情を引き出すものになるのだ。

 こうした「ICO」「ワンダと巨像」に近いのは旧ソ連の伝説的な映画監督アンドレイ・タルコフスキーだ。「惑星ソラリス」に見られる、60年代の米ソの宇宙開発競争の時代の様々なSF映画の流れで、特に人間の精神や内面に介入する物語を詩的に描いた作品が有名だが、監督のバイオグラフィーを通して作品を振り返ると救済をテーマとしながら、「水」を中心とした映像詩を作り上げ、他の映画では誰も追随できないエモーショナルな映画を生み、特に「ノスタルジア」の完成度に顕著だ。

 あるいはスペインのビクトル・エリセのほうが近いかもしれない。「ミツバチのささやき」「エル・スール」など、少女を主人公としながら叙情的な空想と現実の入り混じった視点を、極めて美的な映像に落とし込んでいる。簡潔さということではこちらのほうが近いだろうか?

 彼らに共通するのは何よりも設定や世界観よりも、いかに観客やプレイヤーのエモーションというものに関わる作りをするゆえにとてつもなくストイックな作業となり、それゆえに寡作になる。タルコフスキーは生涯に8作しか残さず、ビクトル・エリセは40年以上の中で未だに3作しか残していない。上田文人の作家性や方向というのは彼らを思い出させるのである。

2・「ベヨネッタ」「大神」神谷英樹と「デスぺラード」「シンシティ」ロバート・ロドリゲス

B級アクションを得意としながらも子供向け作品や独特のアートスタイルの作品までのふり幅のある能力


 こちらは一転して映画の面白さもゲームの面白さもわっかりやすくアクションだという確固たる基盤を持ち、神谷英樹が一気に名を上げることになった作品もスタイリッシュアクション「デビルメイクライ」だし、ロドリゲスなんかはわずか7000ドルの製作費で作り上げた「エル・マリアッチ」でのデビューがその根拠と言っていいだろう。

 

 しかしそれだけでは終わらず、アクションとして新味を持たせながらアニメ化もされたりしたヒーローものの「ビューティフル・ジョー」や、その方向性をさらに深化させた、仕掛け絵本や毛筆画が動いてるようなレンダリングを行った独特のアートスタイルを持った「大神」などゲームデザインの革新性とグラフィックを一致させる作品にまでのふり幅がある。

 ロドリゲスも子供向けアクション「スパイキッズ」シリーズから、アメコミのヴィジュアルを生かした「シン・シティ」を原作者のフランク・ミラーと共に監督するなどの表現の幅を持っており、そののちに二人ともいきなり得意のB級アクションに「ベヨネッタ」で、「マチェーテ」で戻ってくるあたりもやっぱりそれっぽい。

 さてロドリゲスはタランティーノとともに「グラインドハウス」も作っているわけなのだが、ここは今回エントリの元ネタ記事の方でタランティーノと同じ能力と書かれた須田剛一と神谷英樹が組んで何かを作るとなるとこれは意外に合う可能性があるかも知れない。

 

3・「逆転裁判」「ゴーストトリック」巧舟と「Shall we ダンス?」「それでもボクはやってない」周防正行

裁判などを題材としつつどこかしら身近で軽い作風でありながら、ジャンルの面白さやテーマを決して外さない能力

 

 「逆転裁判」?裁判ゲームつっても前例はないしとにかく分かりやすくか知らないが「なるほど」だから主人公の名前成歩堂かよ!こどもちゃれんじくらいのセンスだよ!「シコふんじゃった。」とか「Shall we ダンス?」てどんだけのタイトルだよ!まだバブルの夢を見ているのか?このタイトルは?

 

 ・・・というように、第一印象はまるで期待が持てない端の企画なのかと思いきや、その中身は高いシナリオの構成や、実際にいるかもしれない「逆転」のオバチャンとか「shall we ダンス?」の竹中直人や渡辺えり子などなどの絶妙にいやげなキャラの立て方などなどが印象深い。

 しかし本当に優れている点はそういうシナリオ構成やわかりやすいキャラ立て以上に所属しているジャンルのテーマや本質をきっちり見せていることだ。巧舟の「逆転裁判」が今日までのシリーズ化に至る人気を得たのもテーマに即した強いADVのゲームデザインを実現し、「ゴーストトリック」などはルーカス・アーツ&「アウターワールド」を思わせるグラフィックデザインなどかなりの部分アドベンチャーゲームの歴史の集積を形にしたように見える。

 

 周防正行も「それでもボクはやってない」など、ここで裁判を取り扱った面で共通していると言えるが、白眉は痴漢冤罪事件を極めて喜劇的に描きながら根底にある社会的なテーマをもあぶり出すという非常に難度の高い仕事をしていることに見られる誠実さが共通しているように見える。

 

 あと、二人とも顔や雰囲気まで大変似かよっている。

Tak

4・「ローグギャラクシー」日野晃博と「天と地と」角川春樹

高いプロデュース能力によってセールスを上げる戦略を持つ一方自分が監督・脚本する作品は自滅する能力

 現在は調子が悪いようだけど、レベル5日野晃博の経営戦略というのは前々から思っていたのだが80年代の角川映画のそれに近いんじゃないだろうか?

 共通項を簡単に挙げていっても、まず日本のゲームなり映画なりの全盛期が落ち着いてきてしまった時期からの、多彩な広告戦略やメディア・ミックスが先んじり、またとんでもないビッグネームの原作をも映画化・ゲーム化して発表してしまう手腕などや、また全盛期の時代から発表の場が無くなっていた映画監督・ゲームクリエイターに作品を制作させるなどなど、様々な功罪の点が大変に似通っているのだ。

 このように大変優れたプロデュース業に対して自身が直接ディレクションした作品になるとこれがとんでもなく底抜けの大作になってしまうわけで、日野の「ローグギャラクシー」の失敗と角川春樹の「天と地と」「REX 恐竜物語」のダメさは相似形だ。

 なので「プロデュース業に専念してくれ。脚本や監督は勘弁してくれ」というのがマニアやらオタクやらの多数の願いであると思われるのだが、その願いもむなしく日野は「ガンダムAGE」の企画のみならず脚本にまで手を出し、近年の角川春樹も佐々木譲「笑う警官」(感想はこんな模様)を映画化したりと相変わらずの阿鼻叫喚を生み出しているのだった。

このエントリを、終了してしまった海外ゲームサイト1UPに捧げます

                         ―EAbase887

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