GHM過去最強の主人公たる処刑人を擁する「Killer is dead」 キラーイズデッド ~探索感想編~

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 ゲームメカニクス・デザイン中心のレビューはmk2に投稿させて頂きました

 さて「シャドウオブザダムド」あたりから飯田和敏や山岡晃を引き入れ、フロントマンである須田剛一自身はクリエイターのプロデュース側へと体制を整え直すという「新生グラスホッパーマニファクチュア」を2010年に宣言して3年が経った。かつて「シルバー事件」で、「花と太陽と雨と」で、「killer7」でプレイヤーの快楽装置たるゲームメカニクスもゲームデザインのアフォーダンスを組むことに一切目的を置かず、徹底的に物語と表現そのものにインタラクションするという類のないゲーム体験のスタンスから逆転し、デベロッパーの拡大に伴い明確なゲームメカニクスとデザインを先に構築する全く正道なゲームデベロッパーへと転換した。

 

 今作「Killer is dead」ではグラフィックスに見られるような「killer7」をはじめとする転換する以前のグラスホッパー作品のファクターが多く見られる。今回も須田剛一はエグゼクティブ・ディレクターの位置におり、本作を主に仕立て上げたのは新英幸ディレクターだ。今作プロモーションで氏は数多く出演しており新たにGHMが名を売り出したいためだろうか?と考えながらも、その出来は2010年代・新生GHMの中では屈指の作品と言える。というのもこれまでのGHM作品の中で最も仕上がった基礎ゲームメカニクス・デザインから導き出された世界によって、過去最強の主人公を実現しているからだ。

 ということで今回は感想と難解(と言うかバラバラ)な物語の考察の2回にレビューを分け、まずは前編として過去GHM作品と比較しての感想編。
 


膨大なGHMの過去を引用しながら、かつての主人公たちの弱度を凌ぐ過去最強の主人公ザッパ

 これまでにもやっていることだが、「Killer is dead」は特にGHM・須田剛一の過去作品の名前や要素が散見される。まず最初に処刑することになる標的の名はトキオ「シルバー事件」の主人公のフリーライターの名であり、助手のミカやエピソード3に現れるアリサなどは「ムーンライトシンドローム」のそれだ。特にミカは完全に「けいおん!」の平沢唯のパロディで声優が豊崎愛生ともう完全に確信犯で初登場シーンではいきなり標的にビンタくれられたり異常なくらいうざったい喋り方にされていたりと「killer7」アヤメ・ブラックバーン並みの日常萌えアニメ俗悪残虐脱構築ぶりが垣間見える。

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        完全に一致 GHMの日常アニメへの評価をゲームをスタートしてすぐに知ることができる。日常を殺せ・・・(シルバー事件25区フレーズ)

 処刑事務所という奇怪な舞台、バイクで走行し16本の腕に握られた拳銃で援護する上司のヴィヴィアンなどは「ノーモアヒーローズ」シリーズのシルヴィアとアリス・トワイライトの入り混じったそれだし、主人公モンド・ザッパはそのボタンを留めないフォーマルなスーツ姿での殺し屋というそれは「killer7」でのダン・スミスであり、モンドの名前で探し屋というこれまた抽象的な職業でありながら仕事への忠実なスタンスを語ったり依頼を受ける姿は「花と太陽と雨と」モンド・スミオだ。

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      殺し屋・探し屋とあまりに抽象的な職に就きながら、スーツに身を包み職務に忠実な主人公の系譜

 主要なゲームメカニクスのガジェットも刀を振るい血を溜めることや、覚醒し鮮烈に切り刻むというのは「blood+ one night kiss」の小夜のようであるし、またボスによっては2週目「perfect kiss」でのボス戦の仕様のようなボス側の視点になって闘うという嫌がらせも入っている。

 そこに加え義手マッセルバックによる射撃のでの手触りは「シャドウオブザダムド」のそれだ。狙いを付ければ敵がヘッドショットを避けようとサイドステップを踏むなんてムーブはその流用で、斬撃と射撃がミックスされるという「ロリポップチェーンソー」あたりで実践してきたそれを完成形にまで持っていき、結果スラッシュ&シュートとも言うべき、ありそうで無かった日米がそれぞれ得意なアクションとTPSのジャンルが混ざった独特のジャンルの構築に成功している。

 そして忘れてはならない「michigan」カメラマンの主観視点で視姦するというのはあのジゴロモードへと受け継がれているのであるって正直スマンこれはもう無理やりです。

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 GHM名物・実在の俳優女優モデルだろうのキャラの登場。これまでも菅原文太などモデルにしてるのが出てきたが、モンドガール小春はおそらく堀北真希。

 そうした過去のGHM作品のキャラクターを想起させる登場人物たちから新生GHM以後のゲームメカニクスが搭載された中で何が描かれたかというと、なんと過去最強の主人公たる処刑人が生まれたかに映り、不思議にどの過去作とも似つかない独自のものになっていることだ。むしろ過去作品と嫌でも比較してしまうような名前やキャラデザインの引用によってより最強さは際立つかに見える。

 GHMの主人公たちは例外なく生きる世界や社会の背景や、国家や時代といった制御できない流れの中で無力や失望にさらされながら人格や記憶さえ崩れ、狂気や悪意に触れ続ける。モンド・ザッパもそうしたアドベンチャー期のGHMの主人公たちのように繊細さを抱えた身なりでありながら、重大な過去を覆い隠す記憶喪失に苛まれている背景を持つ。

 だがしかし「シルバー事件」の主人公であったあなた(デフォルトでアキラとあるらしいが)のように一発の弾丸を撃つことなく、状況に流されるままであったり、クサビテツゴロウのように真相に触れる中で無力さや憤りに苛まれることは無く最後まで自らで狂気と悪意の中心と対峙する。「花と太陽と雨と」のモンド・スミオは島の真相はわからないままたらいまわしに流される中で一度撃ち殺されさえするまま、ロスパス島を後にしたのちにようやく自らの出自を思い出すのだが、こちらのモンドは任務の中、記憶を取り戻し真相に向かい合う。「killer7」の結末近くで暴君ダン・スミスを含むスミス同盟のようにあっさりと殺されることも無く、真の主人格者のように自らの過去に戸惑い崩れ落ちることもなく、真相に決着をつけに向かう。

 

 さらには「ノーモアヒーローズ」のトラヴィスのようにモーテル暮らしで切ないステーキのコックやサソリ駆除のバイトの薄給を貯めながらシルヴィアのケツを追ってランキング戦に向かうようなくすぶった生活で、やけに多い女性ランカーたちと死闘することがセックスの暗喩みたいな童貞的な回りくどいことはなく、同じ殺しの仕事なのにこちらブライアン処刑事務所はアメリカ・ペンタゴンの下部組織であるので異様に高給取りであり、国家に所属した人間ということで徹底してフォーマルなスーツを着込み任務に忠実たろうとしながら、プライベートでは多数の女と付き合う。こうしたザッパの造形には「アメリカン・サイコ」でのクリスチャン・ベールの演じた主人公のような二面性を表現しているといい、あの映画でのウォール街での投資会社の副社長という、女にも金にも困らないハイクラスな社会的地位を持ちながら、平坦な人間関係や環境による自我の崩壊からか人を殺さずにはいられない主人公の影響があるという。

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  なにひとつ不自由の無い筈の社会的地位を得ている筈の人間の精神分裂の物語。「キラーイズデッド」の物語理解のヒントともいえる。

 

 そして最大の変動と言えばこれだ。これまでの須田作品で狂気や分裂の象徴として不気味に夜空に輝いてきた月に、本作では宇宙服のヘルメット一つで直接乗り込むのである。つまり狂気や悪意を象徴していた本拠地に直接向かい対峙し、最後にそれに決着を付けるというスラッシュアクションのジャンルに合わせた戯画化だ。これまでの制御不能な世界と社会によって生まれた狂気に翻弄される主人公たちの弱度は物語と表現を優先するアドベンチャーというジャンルや発想ゆえに生まれたのに対し、プレイヤーの技術上達によって世界を切り開いてケリを付けていくスラッシュ&シュートのジャンルによって生まれる主人公の強度によってモンド・ザッパはGHM作品過去最強の主人公となったと見える。

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         狂気と悪意と分裂を暗示し続けてきた本拠地へと向かい、直接闘う

 本作は須田剛一と三上真司が気に言っていたと言う「シャドウオブザダムド」のシナリオ第2稿を元にしているということらしく、記憶を失ったザッパが自らの記憶を追体験し直すシーンなどはオレが当初「サイコロジカルアクションスリラー」と聞いて想像していたダムドの姿を思い起こす形となっている。だからちょうどダムドと本作は兄弟みたいな関係みたいで一本気な兄貴に対してクールで皮肉めいているが精神を病む次男坊ってドミートリイとイワンみたいなありがちな構図すぎる関係に見えるのだが、「一般向けとしては分かりにくすぎるのでボツ」としたように尋常でないバラバラで難解なプロットでありながら、その実シンプルかつ須田剛一作品の通低音となっている根源的なテーマに向かい合った物語でもある。

 次回後編・シナリオ考察編にてあの物語に何があったのか?に続く。とりあえずヒントになる映画として先述の「アメリカン・サイコ」やデヴィット・リンチの「ロストハイウェイ」「マルホランドドライブ」のような、あまりにも陰惨な体験を受けたゆえの心因性記憶障害に伴う物語の分裂と、あと単にアクションゲームで搭載できるテキスト量と言った製作の事情込みでの分裂を示しているのである。

 と言うわけで後編・究明考察編はこちらから続きます。

●キラーイズデッドに至るまでの過去のGHM作品レビュー

killer7 グラウンドゼロ 2001年9・11テロ後に壊れた現実の多層人格アドベンチャー考察

知られざる「ムーンライトシンドローム」続編「BLOOD+ One night kiss」感想&考察 凍結した日本郊外の光景

地獄の音響の山岡晃とフランツ・カフカの「シャドウオブザダムド」感想と考察

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