あなたは12年前のPS2のキャンペーン「RPGの世界を旅しよう!」キャンペーンに当選したでしょうか?

”RPGの起源はローマ。だからここ旅行しよう”ってこじつけすぎだろ!

  日本のRPGが気が付けば「JRPG」なんて言われ、その独自進歩したキッチュな面を拡大解釈されるようになったのはどのあたりからだろうか?

 いま歴史を振り返ったとして、日本のRPGってのがコンソール機の進歩に伴う映像の演出面から物語の構成の仕方などなどを含めた垂直進化を行えていたのは2001年の「ファイナルファンタジーX」くらいまで。

 映像やシナリオ主導による構成の対照としてRPGというジャンルとしてのメカニクスやルールを元にしたプレイヤーの技量やアイディアを生かす自由度の面ではオンラインというテーマが絡むことによって、シングルでのメカニックも変貌。その象徴としてオンラインRPGとなった「ファイナルファンタジー11」が出た2002年あたりから、かなりRPGの様相は変わってきた気がする。(コンソールでのオンラインRPG化はセガの「ファンタシースターオンライン」がもっと早いが)

 あなたは覚えているだろうか?2002年に数多くのRPGが様々なパブリッシャーからリリースされ、その販売促進としてソニーから該当するソフトを購入することでその作品のイメージに合わせた国へ旅行できるキャンペーンが展開された。「RPGの世界を旅しよう! キャンペーン」。半ば安易なこの企画だが、今振り返ると該当するソフトのそのほとんどが垂直進化と全く別な異様な方向へと向かっているのである。この異様さの中に、日本のRPGにいかにJが付く独自性が出たのか?ということを考察するってことで今回は懐かしきこのキャンペーンから提唱する、JRPGの2002年問題仮説。
 

テイルズ オブ デスティニー2(ハイデルベルグ)

JRPGのアニメとキャラの紋切り型イメージの加速

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 JRPGというジャンル名が一般的になり始めたのもコンソール機にてバイオウェアやベゼスダソフトワークスの作品が展開されることによって、海外RPGがRPGの正史を持ってきたから。その比較からあるジャンルが日本で独自発展したものに頭文字にJが付く。JPOP。J・MMA。(日本の総合格闘技・これもアメリカにシーンをかっぱらわれて以降、日本の独自文脈に対し”J”がつくことに。格闘技批評オウシュウ・ベイコク・ベースもよろしくお願いしますね)

 しかし特にJRPGの独自発展面ということで紋切り型のイメージに"アニメ調でガキのキャラクターによるファンタジー"というのがひとつ出来上がっているかであり、現在たとえばイメージエポックがURLをJRPG.jpと自称して意図的にそういう作品をリリースしてる。

 西欧TRPGの提供していたファンタジーの独自解釈から気が付けば、日本で独自発展してるアニメとかの部分まで全部乗せなのはやっぱテイルズシリーズ。オレが思ってるポイントはただアニメ的キャラクター的ってことじゃなくて、それを元にした量産や様々なシリーズの派生など乱発を行ってることがあると思う。

 実際、この後のテイルズシリーズは他のFFやドラクエが次回作までのスパンに3、4年掛かっているのに対してPS2時代以降、年に1-2本というハイペースで様々なハードでリリースしていく。海外展開も積極的になされておりJRPGの独自文脈ぶりを定着させる一端にあるには違いない。

hack//侵食汚染Vol.3(サンディエゴ)

MMORPGのシングルでの切り口+メディアミックス

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 こちらはバンダイによるメディアミックスによるプロジェクトで、各巻に分けてアニメDVD付きで販売するというアニメ調・キャラクター系統なんだけど、ここでテーマにされているのはMMOというのをシングルRPGでネタにしている点だ。

 .hackシリーズは今振りかえるとそのコンセプトには当時のJRPGの揺らぎが全部詰まっているかのようだ。RPGのシングル・オンライン問題、当時のスクウェアといった大パブリッシャー以外の資金力が限られる中、大作RPGの分割エピソード方式という策などなど。ナムコ発売・モノリスソフト制作の偉大なる失敗作たる「ゼノサーガ」シリーズとかスクウェア・エニックス以外の身の振り方ってこんな感じになったりしがちだった。

 その後本当に.hackシリーズもオンラインRPGとして販売されたり、当のFFがオンライン化以降シングルRPGのシリーズでもほぼリアルタイムのメカニクスになるし、日本のターンベースのトップだったドラクエもついに10にてオンライン化,、ターンベースの手触りを残したままのオンラインを実現している。

ダーククロニクル(マンチェスター)

初期のレベルファイブ

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 PS2時代に躍進していったデベロッパー・レベルファイブ。もうここまでのRPGで共通してるのが戦闘がターンベースじゃなくて半ばリアルタイムでのアクションRPGのようなメカニクスになってる。

 リアルタイムでの攻防ってのはコンソール機で導入されたオンライン前後で大きくメカニックが変わっていったと思うが、それ以前から初期のテイルズを作ったチームによるトライエースの作品はじめ、90年代中盤以降のコンソールでのRPGのデベロッパーの傾向はアクションやシューティングなどリアルタイムのジャンルの快楽も非リアルタイムのRPGの収集や蓄積要素の快楽も一緒くたにする傾向はあったと思う。当時のレベルファイブはそういう日本のビデオゲームのミクスチャー世代のひとつとして見ていた。

 それにしても「ダンジョンに潜って、集めたパーツからジオラマを建てなおして進行させる」というこのゲームシステムのサイクルをいま見ていてどうしても想起するのはパソコンからスマホに至るまで広がっている今のF2Pのメカニズムとサイクルだ。

 アクションRPG形式で材料やアイテムなどを収集していって町を発展させるみたいなサイクルのゲームっていまセガの「キングダムコンクエスト」シリーズを思い出してしまう。

 現在F2Pでいろんなデバイスでプレイ可能というコンセプトの「ワンダーフリックを展開してるけど、このあたりのRPGサイクルの原典という気がする。

アンリミテッド:サガ(ローマ)

日本のRPGが原点としてTRPGに回帰しようとすることの困難さ

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 FFがビデオゲーム垂直進化の一端を担う一方で、サガシリーズはコンピューターRPGというジャンルのメカニクスそのものを生かす造りをしてきた。その中で革新が行き詰り始めた時には、よく言われるように古典へと還ろうとする動きが起こる。これはどんな表現においてもそうだ。

 RPGにおいては古典へと還ろうとする場合、それはアナログのTRPGになるのだろう。「アンリミテッド:サガ」はリアルタイムでの処理能力高まるPS2時代においてそうした試みを行った。ところがだ。ただでさえコンピューターRPGとアナログでのTRPGの間には差があるだけではなく、その中でも日本のコンピューターRPGの歴史として還るべき古典にTRPGはない。ドラクエもFFも、どこまでも「ウィザードリィ」や「ウルティマ」の解釈の亜種としてスタートしたことで独自のパワーを得たものだ。ベセスダの「エルダースクロールズ」シリーズなどはTRPGの過去までに戻れる感覚があるのに対し、JRPGにはそれが無い。(というか、日本式のTRPGを源流としてコンピューターRPGが誕生という経緯がない)

 その中でもさらに日本のコンピューターRPGの独自進化に位置付けるべきサガシリーズの祖先を辿っていった場合、ダンジョン&ドラゴンズなどに行き着くとは到底思えない。「アンリミテッド:サガ」の異色さというのはいよいよ独自発展が極に来たJRPGが、ある種の原点回帰に古典にアナログのTRPGを置くことの倒錯から生まれている。

ブレス オブ ファイア V ドラゴンクォーター(ナポリ)

誰もがほぼ共有していない独自ルールによるサバイバルRPG

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 ブレスオブファイアシリーズの中でも異形の作品として名高い「ドラゴンクォーター」。あまりにもなゲームメカニクスの変更により海外版では正規のナンバリングから外れた外伝扱いになった。

  本作はブレスシリーズのファンだけでなくとも、一般的なRPGのファンからしても全くと言っていいほど共有されていないルールによって構成されている。高難度で死んだらLV1からで最初から?じゃあ「不思議のダンジョン」のようなローグライク?違う。アクションRPGのようなもの?違う。シンボルエンカウントでそのマップでの戦闘?シミュレーションRPGのようなもの?違う。様々なRPGのタイプを抱えながら、そしてそのどれにも似てはいない。

 「ドラゴンクォーター」はここまでのトレンドであるリアルタイムのアクションと、RPGの蓄積や収集といった側面のミックスを行っていない。リアルタイムジャンルのトップであるカプコンであるに関わらずこれは皮肉めいた話だ。

 プレイヤーは一見して、個々の部分では共有しているルールがあるのに、総合すると全く見たことも共有したこともない中で、管理された社会に追われながら自らの生命をかけてニーナを地上へと連れる少年リュウを何度も何度も死なせながら死に物狂いでダンジョンを先に進むことを演じる。

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 以上の5作品はそのどれもが「RPGの世界を旅しよう」というキャンペーンに暗示される紋切り型のイメージからかけ離れているし、紋切り型の世界観、紋切り型のゲームメカニクスとなっているわけでさえない。

 2014年の現時点から各タイトルを振り返るとまだ新興のレベルファイブやサイバーコネクトツーが当時のトレンドや、クリエイターが食ってきた経験をミクスチャーしてる感覚の作品はじめ、90年代からのサガシリーズやブレスシリーズが完全に節目に入り、そこで異形化した印象がある。

 2002年のFFドラクエ以外という、垂直進化の手綱を持っていないタイトルというのはかくも異形化したり、オンラインの影響が作風に影響があったり、アニメとキャラ化に加速がついていったり、実質ありえない古典へ向かっていくという祖先なきJRPGの異常な変貌がこのキャンペーンの作品たちに投影されている。

 最後に「RPGの世界を旅しよう」キャンペーンはどうなったかというと、世界同時多発テロの影響によって中止とされ、当選者には現金が送られたという。とてもソニーを感じる。あなたはこの時代の節目に生まれた5作品のいずれかを買い、そしてキャンペーンに応募し、現金を受け取っただろうか?

8件のコメント

  1. この時代はゲーム離れしてしまっていたので詳しくないのですが、バラエティに富んだ?RPGが発売されていたのですね。
    興味深いです。
    このCMを見てコカコーラかなにかで宇宙旅行が当たるCMを思い出しました。
    いまや景気のいいCMは宝くじくらいですね。
    ところで、思うんですけど海外のRPGって結構JRPGのようだと感じませんか?
    ベゼスダは別として、マスエフェクトとかFF10、12をプレイしている気分になるし。
    ちょっとバタ臭いキャラとかギャルゲーちっくな恋愛要素(進展の仕方)とか宇宙船が飛空艇のような役割をになってたりとか、JRPG臭を感じるんですよね。
    マスエフェクトはインタビューで映画版FFのデザインを参考にしていると言っていましたしゲーム版もかなり入ってると思うんです。あ、JRPGというよりFFの影響だけ受けているだけかもですね。
    日本のRPGはTRPGなどの文脈を吸収できず、アニメ系の色を特化させて今のJRPGになっちゃいましたけど、海外のAAA級RPGはちゃんとJRPGの良い所?を吸収している印象を受けます。

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  2.  かつてアサシンクリード1がゲーム部分の単調さを指摘され、その改善版として出された2作目は実にJRPGの要素が含まれていました。報酬や宝箱からお金を集め、装備を購入し、戦闘を有利にし、ストーリーを追うという文脈です。この部分は最新作まで受け継がれていますね。
     お話の内容も英雄的な主人公のみを操作し、悪いやつを倒すという明快さです。いわゆるナラテイブではない一本道ですね。
     上記のsabooさんもご指摘のようにJRPGが構築したいくつかの要素は、新鮮味には疑問がありますが、今でも十分に面白いのだと思います。
     話が変わって申し訳ないのですが、FFのJRPGとしてのアイデンティティーとは何なんでしょうかね。
    ひとつの『伝統』として「毎作、作風を変える」というものがあり、比較的チャレンジをしやすいシリーズであるにもかかわらず、近作でも使い古されたシステムは残り続けています。
     FF13シリーズは表向きにはAAAの描画が可能なのに、戦闘ではSFC時代のアクティブ・タイム・バトルが健在です。いったい何がアクティブなのでしょうか・・・。
     ATBにかぎらず今の時代に似合わない『伝統』が多すぎる気もします。多少の批判はあったとしても、既存のファンが驚愕するようなFFを見てみたいです。

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  3. >saboo氏
    そうすね、バイオウェア系で洒脱と感じたのが
    PS2以降のJRPG系で乱発していた会話劇のムービーをぼさっとしながら見てるだけ、
    といったプレイヤーの関与しない部分が出てきたところを、
    徹底して会話に参加させ、善悪の行為次第で選択肢も変わっていくみたいな部分の
    詰め方も優れているところで、日本のRPGがこんな風だったらな、というところを
    突いていたと思います。
    >つちのこ氏
    本記事はちょっと前の特殊任天堂論ネタとダブってるとこありまして、
    そのこころは垂直進化が終わった後・垂直進化から外れた側のクリエイティビティということで、
    いずれも特異で難解な変貌を遂げるということですね。
    で、アンチャとかがムービーとゲームのミックスの進化を先行して
    ベゼスダとかがRPGの垂直進化部分担ってで
    日本のRPGは頭文字にJの付く特異さの象徴というか。
    近年FFの13シリーズの歪つな感じは
    まあ世界のビデオゲームの流れと日本のビデオゲームの流れの文脈違いが
    もろに出てる感じが傍目にはあります

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  4. あの頃はレベルファイブがこんなにも成長するとは夢にも思わなかったなあ・・・
    垂直方向に進化したはず!?のFFシリーズよりも、子供向けに作られた二ノ国などのほうが
    世界的な評価が高いところに哀愁を感じます(´・ω・`)

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  5. >ジョニーさん
    サイバーコネクト2も隔世の感がありますね。
    二ノ国は日本が世界で評価されている部分をまとめた
    レベルファイブのプロデューサーの資質が良く生きた結果のように見てます。

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