「MGSV:グラウンドゼロズ」感想と考察・新たなスネークのこれまでシリーズとの決定的な変貌

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 しばらくインディーズゲーム界隈のコンテクスト解きが主だったところで、ひっさびさのビデオゲームド直球の垂直進化ラインのタイトル「MGSV:グラウンドゼロズ」をひととおりクリアーしたのでそのレビュー。

 ついにPS4を購入したので、その第一弾のソフトとして買った。今後UBIの「Watch dogs」「The division」もリリースされるし、いよいよ次世代機ならではの光景とは何か?という展望も込みでの内容なんだけど、その意味でまず「MGSV:グラウンドゼロズ」はこれまで新ハードが登場するたび1,2本はあった、どんな技術でなにができるのか?という技術デモの側面みたいなソフトという側面もある。

◆MGSV:GZでの決定的な変貌の一つ・オープンワールドと「ムービーの長回し」

 雨の中を捕虜となったチコが尋問を受けるシークエンスから、基地を取り囲む岩場にビッグボス・スネークがたどり着くまでのシークエンスによって本編は始まる。

 開幕早々のこのシーンの時点でMGSVならではの変貌が刻印されている。MGSはストーリー推進部分には存分にムービーを多用するのがお決まりのようになっているのだが、そのムービーの表現にこれまでにない変化が起きている。それは何か?というと、このムービーにカットが存在せず、ただひとつのシーンを長回しにしてゲームプレイにまで自然に繋いでいることだ。

 通常の映画やドラマなどでシーンをわかりやすく説明していくためにカットを繋いでいくことで進めていくことが主であり、ワンカット内で登場人物のカメラのズームなどによって、映像で心象風景の説明などを行っていく。「MGS」シリーズはムービーでそうした形でストーリーテリングを推進してきたのだが、今回それがない。ほぼ全てをワンカットのカメラである長回しを行っている。カットが割られるのはヘリコプターにチコを乗せるインタラクトを行った時くらいの操作上どうしようもない所くらいで、本当にわずかだ。

 長回しとは何か?それは映像のカットを繋いでいくことによる登場人物の会話や、カメラのパンやクローズアップ感情移入を助ける推進の逆に、カメラの長回しによる表現の効果とはその状況をリアルタイムに観客が体感することや、観客自身が状況の当事者のようにその中にいるという感覚を持たせることだ。古くから映画で溝口健二からテオ・アンゲロプロス、それから手持ちカメラでのPOV映画に至るまで、その長回しで表現されるのは演劇的なライブ感から素人の映像の真実味といったものまで様々だ。

       「トゥモローワールド」の長回しによる、状況の体感のシーン

 最近だったらアルフォンソ・キュアロンの「トゥモローワールド」、そして「ゼロ・グラヴィティ」が意味深い長回しによって、観客にその状況を体感させようとする造りをしている。崩壊していく世界の風景や、3D映画によって宇宙空間という状況に没入させるために、長大な時間をほとんどカットをせずに進行させる。

 「MGSV:GZ」での第一の変貌とはこうしたムービー面の変化だ。物語や登場人物の説明的で情緒的なカットによる進行と逆転し、プレイヤーが状況そのものの中にいるということを目指している。それは本編で基礎のメカニクスに据える予定だろうオープンワールド化と無縁じゃない。オープンワールドの効果もまた、世界と状況そのものの中にプレイヤーが関わるものだからだ。つまりこの変化が意味しているのは、これまで情緒的なドラマや人物の表現を主にしていたMGSシリーズのスタンスが逆転するギリギリまで転換していることだ。

 オープンワールド&長回しによる根本的スタンスの変貌によって描かれる状況主体の光景は、かつてなく無情だ。これまでのMGSではどんな登場人物も決闘の後にいちいちと自身の過去を語ったりしているくらい、死ぬくせにやけに余裕を持っていたりするくらい、感情移入してくれと言わんばかりに情緒的になることが少なくなかった。だがしかし今作「MGSV:GZ」ではこれまでの根源的なスタンスから逆転し、ほとんどの感情移入の導線もなく冷酷かつ残酷な状況そのものの只中にプレイヤーを置く。

 「MGS:PW」からのヒロイン・パスを、拷問の末に丸刈りにされた状態となったところを発見する。そこで発見した後にいちいちとどうしてこんなことになったのか、どうしてこんなひどいことになったのか、久しぶりにスネークに出会うこれまで何を思っていたのかなんてことを、すぐさまムービーだと分かるようにカットを割り、感情移入を促すようなことはしない。ゲームプレイからのカメラを引き継いだまま、その残酷な状況を確認するかのように進行したのちに、すぐさまにゲームプレイに戻るのみだ。

 その後にヘリコプターの中でパスの死に至るまでのシークエンスでさえ、腹のなかに埋めこまれた爆弾を取り除くことから、ヘリから飛び降り爆死するに至るまで、映像の中で感情移入を差し挟むようなことはほとんどありはしない。わずかに、BGMがその役割を担う。全てが淡々と状況を映し出すように構成されている。それはやたら説明的でベタベタとウェットになりやすいMGSシリーズの物語表現の構成では、かつてないほどの変貌ではないか。

 こうした物語の状況の中にある感覚もFPSにおいては「ハーフライフ」シリーズなどなどがとっくに通り過ぎた道であるとも言え、イベントシーン中に自分で首を振れないバイオショック・インフィニット」とも感じるけれど、本当に長い時間を経て海外の流れを最も良い意味で日本のクリエイトで解釈したギリギリのラインだと言える。

 

◆海外ビデオゲームシーンと足並み合わせたゲームデザイン
 

 現行の海外ゲームの流れと拮抗しようとすることが「MGSV:GZ」のストーリーテリングをかつてなくドライにしたのにしたように、現行の海外ゲームが積極的に「ゲームのルールである」と認知させる体力表示などの画面情報を極力排し、弾薬の表示程度にまで抑えているというリアリティ水準の変貌にも対応している。

 マップ表示にしても「作中の拡張現実を生むデバイスを介する」という「Deadspece」がやってる形に添っている。「スローモーションで銃撃戦のバレットタイム」も敵兵に発見された瞬間に発生する形に落とし込み、スローモーションが終わるまでに敵兵を排除するかどうかによって周辺全体が戦闘態勢になるかどうかの判定が為されるようルール変更が為されている。

 とはいえスニーキングアクションは敵の位置や視覚を示すレーダーをはじめ画面情報が必要になりやすく、作品世界への没入演出をルールが上回ってしまいやすいジャンルなので、完全な画面情報無しの状態での潜入という、映像とゲームプレイ連動を徹底させるというレベルでの没入は実現していない。

 そのぶんプレイヤーが自分で調査して画面に情報を表示させていくという形を取っている。まず敵地に付いたら双眼鏡を使い、周囲を観察することによって敵兵や対空機関砲などを発見すると、画面上にマーキングがされる。そこから敵兵をホールドアップさせ尋問を行っていくことで周辺マップの情報を集めていき、ミッションの完遂に向かっていくサイクルを取っている。

 今回の「MGSV:GZ」は最初からミッションの基地の地点からスタートしてるので、おそらく本編「TPP」では敵地への事前調査的な側面は徹底されると思われる。

◆ゲームメカニクス&デザイン変貌はどう転んでいくんでしょうか?

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 今後のAAAタイトルでも行われるという、スマートフォンと連動しての画面表示。でも使い勝手は悪かったです 笑

 さて、オープンワールドに伴う自由度、っていうのはもともと特定ジャンルのアクションが導入する場合には、提示されるミッションやステージのクリア方法の過程や手法の範囲を広げることがポイントになるとオレは思っているが、当の「GTAV」も含めてなかなかそれが上手くいってる感じのするタイトルが無い中「MGSV」はどうなるでしょうか?

 本編以外のミッションでも示唆される「ひとつのミッションでかなり多くの解法が存在」というのはこれはオレは「ヒットマン」シリーズから「デウスエクス:HR」くらいしかやってなくて、「ディスオナード」、そしてオープンワールドの「Far cry3」などはまだやってないので上手くは言えないんだけど、とりあえず「MGSV:GZ」は基地からスタートしてるんでかなりのところミッション攻略の経路・脱出の計算フローをプレイヤーがかなり構築しやすい敵配置からステージデザインを味わえるものとなっている。

  そのせいで基本的な一連のゲーム進行のフローの触感は通常のMGSに「ヒットマン」シリーズの多様な解法がある感じで、まだこの「MGSV:GZ」ではこのタイトルならではの独自性は分からない感じがする。本編で天気や時間の変化による潜入フローの変化が加わるらしいんだけど、そういうゲーム世界で刻々と変貌する状況そのものを、どうムードすら保持したままにゲームのルールに落とし込むのかってのは今回含まれていない。

 
 以上のムービー表現の変貌からゲームメカニクスの変貌に共通しているのは、海外ビデオゲームが当然のように行っている状況や世界そのものが現実世界のように稼働していくスタンスにしたことだ。これまで一本道のステージ配置かつ説明的ムービーという、それぞれ独立していたものを繋ぐ形で構成していたもののため、極端に言えばおのおののステージは映画で言うセットや書割りのようなものだった。

 ところがMGSの取っていたその構成がほぼ逆転することによって、「MGSV」ではこれまでのMGSシリーズと比べて作品全体のリアリティバランス(ミリタリー的に現実的かとか時代考証的にリアルかという話じゃないすよ)に変化が起きていると見ている。それはゲームプレイの手触りから、表現されるシナリオ、ムービーそれぞれを総じた体験の質が変貌しているというべきかな、本編はシリーズの中では特にドライで無情な手触りを残すのではないかと想像される。

 その根拠として、事実と状況を淡々と刻印する技術とメカニックであるオープンワールド指向とカメラ長回しがかなりの影響を与えていると感じたのだった。
 

  

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8件のコメント

  1. XBOX360版を購入したのにインストール必須でHDDのない僕はお預け食らってます。
    レビュー読んで知的好奇心は無事満たされました。笑
    例えとして映画を引用されているのが面白いですね。
    僕的に長回しで印象的だったのは狼達の死刑宣告です。

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  2. >(命名)インターナショナルウォーゾーン兵頭さん
    デジャヴ・ミッションやった後に
    360版の雷電使えるジャメヴ・ミッション見てると
    そっちの方が面白そうな気がするな思いました
    ハイスパートアクションに転換してるので
    HDD買ったなら膨大な容量インストール系ならGTAV買うのがおすすめっすよ

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  3. あぁっ!スイマセン、名前書き漏らしてました。一つ前のコメント僕なんです。
    折角イカしたアダ名付けて頂いたのに…。
    ジャメヴミッションのトレーラーのボディスナッチャー風のスナッチャーにカイルリースよろしく未来からやってくる雷電にテンションブチ上がりしました!
    GTAVも恥ずかしながら未プレイでして…、トレバーさんカッコよすぎます。

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  4.  多岐にわたる状況打開の解放は受けがいい言葉に聞こえますが、エントリの前半で述べている通り物語を今のトレンドに持っていくほど、邪魔になる部分でもあります。「The Stanley Parable」などを経てしまうと、「MGSV」においてパス救出は戦略上正しい行為なのか、助けないという選択肢が無いのは何故か、戦地は選択肢が増えるような甘い場所なのかと気になっていまいます。
     そのへん「GTAV」はストーリーテリングで選択肢を作り出し、「Dishonored」は"社会的に抹殺できる"行動をとれたのが斬新でした。「Far Cry 3」はそれこそ"殺人という行為"を描いたので、いわゆるステルスプレイはそこまで重要ではなかったですね。
     逆に"これしか残された道がない"を用意する脚本と演出ができるNaughty Dogなどは彼らのデザインを極めていて、これまでのMGSもそうであったとおもうのですが、たとえば「ブレイキング・バッド」並みの緊迫を目指すゲームもほしい。この場合は複雑なメカニクスは必要なく、プレイヤーがボタンをひとつ押せばいい。
     ゲームプレイに限れば、このジャンルはたいてい主人公側が強化人間で、「Dishonored」はそれを上手に料理していましたが、ノーマルな主人公向けにレベルをデザインした新生「Thief」はくっそつまんなくて、どうしたもんかなとおもったり。加えて、見つからずに進む緊張と、見つかったら殺される恐怖は別枠だなと。
     ここまで書いてアレですが、短いという批判に対しての返答が"やり込み"だった時点で、MGSへの興味は失・・・。

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  5. >(命名)超普通時空錯覚オモライくん再ボールさん
    世界的にも特にムービー主導でリニア的な傾向の強いMGSが
    世界的なトレンドの変貌に合わせた形ってことで、
    日本のデザインがこうまで海外デザインを研究し消化するケースしかも大御所シリーズが、
    という意味でも大きなケースだともいえ、僕個人としては評価してます。
    もう日本のコンソール界隈でそういう対応出来てるとこ、ほんと無いので。
    MGSはノーティドッグ的なムービーとゲームプレイのつなぎ目がシームレスに、
    という能力はあんまり無くて、ゲームメカニック的には今回の方針は僕は英断と見てます。
    (スクエニFFが上手くノーティ的ムービーとゲーム繋ぎやってくれたらなと思ってます。
    って「FF10」では出来てたんですが・・・)
    なかなかコナミ&小島組のスタンスというのは引っかかるとこも目立ちますが
    完全に日本のコンソール界隈のクリエイティビティが
    ある種の鎖国状況を無意識にやってる中では日本と世界の潮流を混ぜ合わせてる、
    というほぼ唯一の点ということで注目しています。

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  6. 主人公が特殊能力持ってたり、ストーリーに影響与える形じゃないと面白くないという意見分かります
    予想外の解法を見つけることにわくわくしたりしないですもんね
    かといって伝統的なMGSのままでも駄目だったと思います
    結局「和ゲーの中では頑張ってるよね」という評価になっちゃうんでしょうか

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  7. >かもめっし さん
    AAAクラスの日本製のゲームの中では、
    もうほとんど対応しきれなくなったオープンワールド化であるとかの方法を
    導入していくことによって、
    結果MGSの特色だったものが過去になくドライに反転していくのではないか、
    という作風の変貌の側面に自分の評価のウェイトがかなり寄ってます。

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