「チャイルドオブライト」感想と考察 それはひとっかけらでさえJRPGの記憶を想起させない(だから良い)

 「チャイルドオブライト」は発売前のプロモーションで大きく「JRPGに影響を受けた海外産RPG」と喧伝していたが、オレが実際にひととおりやってみたところほとんどといっていいほどガキの頃から今までに触れたファミコンからPS・XBOX・wii世代に至るまでのRPG(Jなんてくだらない頭文字なんてなかったころの)記憶に繋がらない。

 しかしそのコンセプトと比べての日本とUBIの文脈の別々さ加減や誤差そのものがとても面白かったともいえ、今回はそんな誤差や文脈の違いにアプローチしてのレビュー。それは日本と北米、大人と青年と子供、フェアリーテール…

実質、アクションゲーム開発生まれだから前提が違いすぎる

 単純に「チャイルドオブライト」のグラフィックスからシナリオ構造、ゲームメカニクスからレベルデザインを総じたトータルデザインがあまりにもタイトに出来ている時点で、オレがガキの頃から近年までに触れてきた日本のRPGの甘ったるくファジーな記憶を繋がらない。

 オレの記憶の中のRPGはどうあれファジーさが存在している。「ファイナルファンタジー」でストーリーの進行に合わせてインフレしていくHPやダメージの快感の裏でまったく使わなかったジョブや、ほとんどパーティーに含めないあまりベンチウォーマーと化しているキャラがメインに使っているキャラとのレベル差が二ケタも離れるなんてことは経験はあるだろう。メカニクスや難度を主体とする「ロマンシング・サガ」「女神転生」シリーズにしても初心者にはまず理不尽で未知なルールを嫌でも体感してきた記憶がある。

 まず「チャイルドオブライト」にはほとんどといっていいほどストーリー主体でありながら無暗なステータスやダメージのインフレを起こすようなデザインではなく、キャラクターや数値にほぼ無駄が無い。全キャラの特性を生かした総力戦。かつ初心者でも確実にルールを理解しやすいデザインで、ほぼプレイヤーの技術上昇を促すことが主体でありステータス上昇は目的ではなくその補助という趣が強い。

 それはあまりタイト、かつ大人びた態度のデザインだ。オレの見てきたRPGの製作者に大人なんてほぼどこにもいない。ガキの全能感に常に寄り添ってくれる。それゆえ日本のRPGは面白かった。

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 このタイトさの理由はもともとアクションゲームやFPS主体に作っているデベロッパーというのも無関係じゃない気がする。本作は「Far cry3」のチームが作っているとのことで、UBIの新たなダウンロード市場専用タイトルの展開のひとつとして、アクションゲームで最近の「レイマン」シリーズにて採用されている2Dプラットフォーム専用エンジン「UBIart」によって製作されている。

 

 そうした経緯によって「チャイルドオブライト」の出生としてアクションゲームの論理で作られたRPGというケースだと判断している。アクションゲームでは徹底してプレイヤーの技術の上昇を中心に置くわけで、プレイアブルキャラクターを経験値溜めまくったりしてどうかしてるくらいまで成長させて勝たせるということをそこまで信頼していない。実際オーロラ姫が当初地上を這うように走っていたところから、はじめて羽を得て空へ飛び立つあの快楽を見てもアクションゲーム土壌のそれという気がする。

 近年のUBI作品の「アサシンクリード」から「Far cry3」のようにプレイヤーの技術上達に足並み合わせた形のプレイアブルキャラの成長というデザインにおそらく90年代中期以降日本のRPGの影響があると感じたのだが、そうしたアクションゲーム屋がより本格的にその影響を掘り下げた形が「チャイルドオブライト」なんだと思う。

 だからゲームの出生的にこれは任天堂のタイトなRPG解釈「マリオストーリー」あたりが最も近いんだと思うけれど、「JRPGといったらマリオストーリーだよね」なんてRPG好きのフォーラムなりスレッドなりのなかでは圧倒的な少数の意見になるには違いないよな…タイトルで「ひとっかけらでさえ」だなんて書いたけど、ごめんやっぱり日本のRPGで思い出すものはいくつもある。でもそれは本流とは少し離れた特異な位置にあるタイトルばかりだ。「7-モールモースの騎兵隊ー」なんかもヨーロッパ絵本的でタイトなトータルデザインが近いと思うけれど本流じゃあないよね。

 一応日本のもので構成的に似てるものはふたつある。2Dアクションとシンボルエンカウント、キャラクターのバストアップによる会話劇、空を飛び回る快楽というのは「ヴァルキリープロファイル」的だし、半リアルタイムで相手の行動を妨害したりするバトルメカニクスは「グランディア」的だ。でもそれで「日本のRPG的だよね」なんて言うにはあまりにもイデオロギーが違いすぎる。オードリー・ヘプバーンとペネロペ・クルスの顔が似てるなんていっても、純粋と奔放や魔性という女優としてのイデオロギーが違いすぎるあまり結果、全く別の印象であるし、多部未華子とスズキG70の顔が似てるなんていっても、人間と自動車というイデオロギーが違いすぎるあまり結果、全く別の印象のようなものだ。

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        「チャイルドオブライト」と「ヴァルキリープロファイル」「グランディア」はこれくらいには似てる


行きて帰るべき基盤となっている現実と一種の通過儀礼というファンタジーの視点の誤差

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  なによりイデオロギーの差として「チャイルドオブライト」が扱っているファンタジーというものの前提が日本RPGのそれと途方もなく違う。まず生きている現実というものに立脚していて、少年少女がその現実を受け入れていくためのイニシエーションとして空想世界や幻想世界へと向かうというそれだ。前に「Finding teddy」「Papo&yo」あたりについて書いたときにも感じたけれど、それは最後に帰るべき現実というもののためにそこを通過するって扱いだ。よくこうした構成の物語って「子供向けだよね」って評されるけど、子供に聴かせるからやっぱり帰るべき現実があるうえでおとぎ話として語り、物語を語り終えれば「はい、これでおしまい。だからおやすみ」と線引きをし、現実に帰して眠りにつかせるのだ。

 日本のRPGはガチだ。帰るべき現実があって、そこに適応してくために通過儀礼として空想や幻想なんてラインは無いわけじゃないがそう多くはない。ファンタジー世界は完全にファンタジー世界という現実として捉えられている。振り返ってもFFやドラクエにしても主人公は最初から青年であることがほとんどで、すでに少年期を終えある程度の現実として世界を受け入れ始めてる時期から本格的に社会や世界に出て現実に適応していくというそれだ。

 にもかかわらず、ある種のガキの全能感は保持されたままでありそれがキャラクターからシナリオ、ゲームメカニクスに至るまで存在しておりガキでありながらにして現実で完全に圧倒する形だ。この時のアンリミデッドサガの項の評に書いたが日本のRPGにはファンタジーの意味でもRPGの意味でも遡るべきTRPGといった親や祖先の存在がない。外来のコンピューターRPGというものから独自に入り組み育った親を持たぬ私生児が、全盛期には世界的なビデオゲーム表現全体に影響を与える活躍をしていたというそれこそ日本のRPGにありがちなラスボスのような形で存在感を発揮していたかに見える。

 そのため「MOTHER」シリーズとかあれぐらい捻った作品にならないと、こうした構図が無い。ちなみに最近の作品でその意味で実はかなり頑張ってるのはレベルファイブの「二ノ国」ではないか?(「チャイルドオブライト」やっててふと気になってたのでこのタイミングで思わず買った。)

 しかもどうやらこの現実に帰るために通過する空想の構図もさりげなく何重にもレイヤーが重なっているかに見える。どうも単なる少女が現実を生き抜くための幻想世界での成長譚ってだけじゃなく、語り手と聴き手、それからゲームとプレイヤーのメタ関係に至るまでの目配せ(が、ある感じ)にUBIならではの特殊性を感じてならないのだが、それはまた別のエントリで触れるとして何か表向きの少女の成長と冒険譚という一次的なレイヤーに留まっているようには見えない気がする。

謎の「手記」から察せられる、さらなるゲームとプレイヤーのメタ関係の気配

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 単純に「ゲームの方がプレイヤーにある幻想物語を読み聞かせている形」という分かりやすいレイヤーが重なっているのはもちろんなんだが、しかしどうもそれだけではない。たとえばあの手記の存在、あれ全部取って読んだらもの凄く混乱させられることが必至なんだけど、ソフィーという人物が書いた手記まで読み進めるとどうも作品世界の19世紀オーストリアというのと全く別な現実世界から介入しているみたいなふしがある(突如として「レムリアはインターネットで調べました」なんて標記が…)。

 単なるイタズラじみた嫌がらせかもしれないし、この辺の公式の解釈もまだ為されてないのでオレの勝手な解釈になってしまうんだけど、この手記の存在は当初の19世紀オーストリアという現実⇔伝説の地レムリアという幻想という関係じゃなく、おそらくさらに上のレイヤーとして今現在の現実があってそこからレムリアという幻想を見てる。というような。この作品はどうにもまだ何か語られてない暗示や謎が存在していると思われる。

 このあたりに示唆されるゲームとプレイヤー世界の線引きの感じ、これも実は「Far cry3」チームのやってきたことのようらしい感じだし(こう書いてるのはその作品やってないからです…)、「アサシンクリード2」のラストあたりで感じたようなゲームを超えてゲームがプレイヤーに直接その構造や関係を暗示してる感じがどうにも本作にさえ漂っているかに感じられ、これはもうフェアリーテールを超えたUBIのクリエイティビティの奇妙さに直結している。この話はエントリ「世にも奇妙なUBI」に続く…

 

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4件のコメント

  1. まだ序盤までしか進めていないのでストーリーについては分からないのですが、
    実際アクション文化っぽさが強くて、JRPG要素はあくまで道具でベースではないのでは、と感じますね。
    ただJRPG押しというのも日本用の宣伝なのかな?と思ったら、海外でもJRPG押しの宣伝なのは面白いですね。
    海外のゲーマーはこのゲームをプレイして「これがJRPGだよねー」と感じるのでしょうか、不思議な感覚。
    あと、ご指摘の通りバトルシステムはグランディア2を参考にしているそうです。
    FF6に影響を受けたというのは(シルク・ドゥ・ソレイユが開発参加しているし)オペラシーンのことなのかな。
    あと
    主人公のキャラデザはFF9のジタンのフィギアが発想の決め手。
    ホタルのお助けキャラはマリオギャラクシーが元。だと語られてました。
    ほんと面白い。

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  2. >sabooさん
    日本式のキャラクターのレベルアップやアイテム購入などによる強化の部分が
    「チャイルドオブライト」はほとんどスキルツリーやオキュライに絞られています。
    でも難易度ハードでやればより分かるんですが、成長フローから戦略が始まってる感じで
    日本RPGの蓄積収集強化の感じがあんまないですね。
    日本RPGの多くは「ウィザードリィ」をそういう強化収集蓄積の解釈をしたゆえ
    そうした感覚を基礎に発展があったんだと思いますが・・・
    逆に海外RPGでもっともそんな経験値蓄積によるキャラ強化・アイテム収集といった
    プレイ感覚を最も発揮してるのはおそらく「diablo」といったハックアンドスラッシュの方面です。
    他のデベロッパーの作品ですが、その日本的な世界観の影響と向こうに染みついた
    ハクスラの成長のプレイ感覚ってのがまざりあった、という意味では、
    「Bastion」だとか、年末くらいに出るらしい「Hyper light drifter」の方が
    メカニクスこそ違えど、実は日本的な感覚に近いのではと思ってます。

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  3. 毎回面白く読ませていただいております。
    自分と意見がまったく違う批評もあれば、完全に同意せざるをえない批評もたくさんあって(これはこれで悔しい)もっと更新してよ!!というスタンスの読者です。
     
    さて今回のチャイルドオブライト自体についてと、その批評。
    非常に考えさせられます。
    個人的には「JRPGとはなんぞや?」と因数分解した結果の要素の骨子を組み立てなおし、
    肉付けを日本人的な(あくまで的な)雰囲気でデザインしなおした感じと見受ける。
    但し、そのリデザインの経過で「脱構築」が起きているのは、意図的な事か…
    ゲームデザイナーが文字通りデザインした遺伝子操作的な作品と感じました
    ただそれに流れる血はJRPGを感じさせます。
    例えるならばシドミードがデザインしたターンエーガンダムと大河原がデザインしたガンダムの関係。
    それはそれで美しいと思うしかっこいいとも思うけど、「これはガンダムじゃねえ!!」と憤る兄貴達がいるのも同じで、どちらの意見も正しいはず。 
    ただこれは何をもってガンダムというかという定義の問題だ。
     
    話をゲームに戻すが、圧倒的に日本的だなーと思うのは、システムの丁寧さ…。
    というか俺そんなにJRPGやってねーやw
     
    ゲームとプレイヤーのメタ関係…
    これについてはザックスナイダーのエンジェルウォーズを思い出した。
    物語が三重構造になっていて現実→ストリップ小屋の天使→ブロンド女子高生日本刀という
    妄想に妄想を重ねる構造になってます。
     
    とりあえず久しぶりに変で面白いゲームやりました。

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  4. >ネームレスさん
    おお意見全然違うエントリがあったならばそれはまた僕は聞いてみたいです。
    ちょっと前のエントリにちらと書きましたが3つのブログの内、
    こちらが一番難易度が高いため更新遅いです 書き溜めたまま放置が2,3件ほど…
    そうすね、シドミ―ドのガンダムっていうのも
    あれはすごく日本のロボットデザインに規律あるデザインを導入した
    すごいドラスティックな変化だったわけです。
    「チャイルドオブライト」は海外式フェアリーテール基調プラスアクションゲーム屋デザインと
    二重に見慣れてはいないデザイン方向絡んでるのが面白かったですよ

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