Sunset 考察&感想 遠い革命と官能

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 中量級規模のタイトルとして、独自の地位を築き上げていたtales of talesの最新作「Sunset」。しかし現在、その作品性どうこうよりも、半ばスキャンダラスな側面が混ざりこんでいる。ここに詳しいようにかつてなくメインストリームに絡もうとするデザインやプロモーションを行ったにも関わらず、期待した結果とならなかった。そのためゲーム開発から遠のくことを宣言。それは矮小化され「インディペンデントが商業的に結果を出そうとするも挫折」というゴミのような意味で門外漢にも注目され、スタジオの最終作と(おそらく)なった。

 ではこの作品に何があったか?それはこのスタジオを評するときの紋切り型の「アート的な…」だとか「実験的な…」といったそれでもないし、はたまたナラティブだよねいやいやゲーム性を超越したどうこうのようなビデオゲーム書き散らしに蔓延するバズワード両巨頭を持ち出すような作品でもない。ゲームメカニクスこそアート、インディペンデント的な難解さは仕方ないけれど、その物語内容自体はかつてなくドラマティックなものだ。

 これはシンプルだよ。もしかしたら日本人オタク層だったら本当に痺れるみたいな要素に彩られた作品なんだ。それはメイドと、決して顔を合わせることのない御主人様との、わずかなメモや仕事の中から淡い感情が取り沙汰される、官能的なゲーム。背景には悲惨な革命。窓ガラスに映る自分の顔。遠くのビルの向こうで燃え盛る爆炎。アートや実験的なんて敷居なんてどうだっていい。その物語内容は暴力や官能、時に愛と死の行間を持ち、静かでロマンチック。それゆえにtales of talesの中で過去になくメジャーな作品じゃないか?

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 官能には節制や間合いが必要だろう。それは爆撃が一瞬にして人々を肉片に変え四散させるとか、キスとハグからセックスに至るみたいな直接的なシークエンスではなく、距離や沈黙によってそれは静かに生まれることだろう。

 「Sunset」は南米の架空の小国・Anchuriaで起きた革命に巻き込まれた主人公アンジェラがメイドとなり、アートコレクターであるガブリエル・オルテガに仕える。一週間に一度、わずかな時間にだけ彼が住むペントハウスに勤務する中で豪華なアートを観たり、アナログレコードをかけたりしつつ、徐々に進行する内戦の事態をガラスの向こうから眺めることになる。

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 極めてシンプルな掃除や整頓のタスクを片付けながら、顔の合わせることのない御主人様のポートレートや部屋中に置きっぱなしになっている膨大な書籍をながめならどんな人間なのか、今何をしているのかを徐々に知っていく形になっている。

 アンジェラは御主人様のことも、窓の向こうの刻々と進む革命も遠くから見つめる。プレイヤーはガラスに映るアンジェラの表情を見取り、そしてモノローグを聴く。強いコミュニケーションの場から徹底的に離れている。だがそんなつまらない日常であっても孤独な作業を続けながらも刻々と暴力は日常に忍び寄ってくるし、また御主人様との関係も選択次第で変わってくる。

 こうして進むゲームプレイには変な形の現実感がある。実際目の前で暴力や殺人を目の当たりにするとか、時間が経つにつれ職場の上司といい感じになっちゃうとかそういった大きな事件みたいなことも、現実に体験してしまう瞬間というのはドラマティックではなく静かなことが多く、後で振り返って記憶をまとめ直したときに衝撃を受けるなんてことも少なくはない。

 革命が進み、街の事態がよろしくない状況に流れつつあるときにペントハウスの窓ガラスが打ち破られるとき。そこにはドラマティックでもなんでもない現実で、たとえば交通事故の現場に出くわしたみたいな不測の事態に遭遇した感覚を思い起こさせる。やがて街が燃え盛るときも、スペクタクルなそれではなく日常の延長にある。

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  「Sunset」には過去の作品「The Graveyard 」「The path」、そして「Bientôt l’été」のような前衛演劇を見つめるかのような物語内容は無く、非常にどこも具体的に出来ている。もしかしたらこのゲームプレイに乗っ取った、ビデオゲームの大モチーフたる戦争ももっと抽象化して作ってしまうことも出来ただろう。

 だがこれはとてもドラマティックな内容であり、さらに特筆したいのはここのところ中規模作品で頻出してるwalking simulatorタイプの作品の中で、どうあれ具体的な世界で現在進行で進む状況を描き、成立させていることに大きな意味があるんじゃないか?って考えてる。

 例えば「Dear Esther」から「gone home」などなど、終わった過去から主人公のモノローグ、そして残されたガジェットから物語をプレイヤーが推測していく形となっている。かつてビッグバジェットも担当していたチームによる「the vanishing of ethan carter」 にしたって基本的には全てが終わった後の廃墟から過去を推測していく進行だ。だがしかし 「Sunset」は違う。一市民の目線で、メイドとしてルーチンワークをこなしながら進行していく現実に触れ続けている点が異なる。

 その意味でもtales of talesが(おそらく)最後に放った一発は大きい。walking simulatorタイプの物語進行が全て終わった過去を振り返ったり、推測したりする(自己言及的に)なりがちなのに対し、進行していく現実を生きていく構図にしたこと、また戦争や革命に巻き込まれた一市民の日常というのを「This war of mine」とも違う形で描いたこと。

 そしてなによりも、こうした文脈を外しても単純に言って革命に巻き込まれたあるメイドと御主人様を巡るお話として楽しめることが、とてもよい。

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 間や沈黙から生まれた官能的なそれが、時間を経てから染み渡るみたいにこの作品の評価は後からついてくるのだと願ってやまない。…って感じで美しく締めたいところだけど、ほんの少しオレにも「この作品のヒロインがたとえば「ヨルムンガンド」みたいなタフネスな女の子主人公なんだけど最初クソみたいな単純作業に文句ばかりなんだが、だんだんメモで御主人様と交流するうちに萌えてきてベッドでごろごろしたりするようになったりする、なんて意匠だったらもう少し日本人オーディエンスに受けてただろうか…」などと思うことが… いやいや、なんでもない、なんでもないんだ。

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2件のコメント

  1. なんかすごい面白そうに思えてきました。セールの時にでもプレイしてみようかな。
    リンク先の記事は読んでたんですけど、こっちのレビューを読んで「商用ではもうやらない」と言ったのが分かった気がします。
    うーん、それにしてもホントに『静か』に表現してくるのは日本人受けしそう。時代劇映画とかそういうの多い気がするし、比較的最近観たのでも『山桜』とか。
    まあでも主人公のデザインが勇気出し過ぎなのは確か。

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  2. これすごい各方面でやりきれてないところにアプローチしてる感ありますからね
    戦争モチーフの一市民であるとか、競技性からパズル性も省いたアートゲーム系統で
    盲点となっているところとか。
    そして女性主人公という意味では、アフロアメリカンの女性主人公というのは特にアプローチされないし、なによりtales of talesのメインクリエイターのひとり、Auriea Harveyさんが実際アフロアメリカンの方なんですね。
    あまり掘り下げてはいないのですが、ある種、自伝的な部分があるのかもしれません。

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