今年遊んだ海外のフリーゲーム傑作おすすめまとめまとめ

 さて海外のフリーゲームを簡単に探したいなってときにとても役立っているサイトは、itch.ioGame joltの二つだ。ここは正確には作品によっては有料で販売されているため、個人作家のポータルサイトと観るべきなんだけども、無料でやたらハイセンスな作品が投稿されていることに特徴ある。

 
 いや、無料というのは違うか…これらはPay what you want(あなたの好きな金額でお支払いください)って形で公開されている。paypal を利用して、面白かった作品には作家にお金を払うことができるってシステムになっている。まあ日本でたとえるなら、ふりーむ!やvecterで登録した作家にダウンロードしたお客さんがいくらか好きな金額を支払えるような感じかな。というわけでそのあたりを漁っていて面白かったものをいくつか。

 タイトルクリックでダウンロード先に行けます。これらを面白そうだな、と思ったなら、いくばくか作った人たちに届くように、お金を目の前の帽子の中もしくはギターケースの中に入れてみてください。

Off-Peak

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 ジャズとエレクトロニカを折衷したバンド・Archie PelagoのメンバーCosmo Dの作ったwalking simuluter。音楽家の作ったゲームって坂本龍一や電気グルーヴなどなどいろんなケースがあると思うけど、このジャンルで来るのは意外だ。しかもAAAからインディペンデントまで含め今年遊んだ中でも、かなり気に入ってる一品。

 とある巨大な駅の構内。破れたチケットを集めるだけのゲームなんだが、そんなこと表向きのパズルはどうでもいい。パズルですらない。

 庄司晴彦の「GADJET」以前取り上げた記事はこっち)や「クーロンズゲート」を思わせる初期3DCGアドベンチャーのような手触りだ。建物の中にはシックなアナログレコードが並んでいる区画があり、カッコいいジャケットデザインのそれを延々とくすねたり、巨人たちがアナログゲームを遊んでいるなどなどモチーフに脈絡は無い。しかしなぜか混沌とした感じではない。

 すでにそれだけでもワクワクしてしょうがないんだが、更に感激させるのはその音楽だ。サイバーともスチームともつかないパンクでシックな世界観の中を歩く中で流れるArchi Pelagoの楽曲は愉快やら哀しいやら、混乱した感情をもたらす。構内にあるアナログレコードを取りまくる些細なことが、別に後で使うとか、ステータスが上がるとかそんなことが全くなくてもやけに気持ちよい。ディスクユニオンあたりでアナログレコードを物色するあの感覚だ。

  でもこれも、「GADJET」だとか「クーロンズゲート」を遊んだ時みたいな、あの映像と音楽が混ざり合った時に生まれる奇妙な感じの延長だったりする。この2つの3DCGの暗黒世界から早10数年、だれもリバイバルしたりしないなかで音楽家の作ったこの一作はやけに刺さる。オレが今年遊んだベストのひとつ。

https://bandcamp.com/EmbeddedPlayer/album=3949708721/size=large/bgcol=ffffff/linkcol=e99708/tracklist=false/artwork=small/transparent=true/

PHOTEBOMG

 

 

  タイトル名はまんま「うまく撮れたと思った写真に、全く関係ない変なものや人が映ってしまった」なんていう英語のスラング。じゃあこのゲームではどんな変なものが映りましたかっていうと、爆弾です。

 SNS(というかまんまTwitter)にアップロードされた写真を辿って、広場にに爆弾を仕掛けた犯人をみつけるというちょっとした社会派ネタメディアネタの作品。制限時間内に犯人を特定していき、タイムアップの後に犯人を指摘するゲーム。上がってる写真と一致した場所を確認すると人々に色が付き、どの色の人間が爆弾を仕掛けたのかを目星を付けていく。タイムアップすると犯人当てのシークエンスに入り、指摘した人間が射殺される。

 ミニマリスティックな映像とも相まってドライに犯人を捜索する体験も込みで、今こうしてやり直すと、時節柄嫌なリアリティを感じてしまってならない作品。SNSで辿った犯人を射殺するなんてのも含めてほんとは凄く嫌な生々しいところを突いているんだけど…いまダウンロードして遊ぶならオンタイムでヤバい感じも暗に受け取れる意味でおすすめかも。もっと作りこんだ有料版が遊んでみたい。

SC2VN

 e-sportsシーンをモデルにした青春ノベルゲーム。韓国を舞台に、もっとも高いユーザー数を持つ「starcraft2」のプロ選手たちが主人公として描かれる。ということでまんまタイトルはStarCraft2 Visual Novelの略称なのですね。

  公式観てみたら「starcraft2がもしもギャルゲーだったらどうなるのか?」みたいなジョーク動画を元にしたみたいなネタで作ったゲームらしいんだけど、製作過程の中でkicksteaterで制作資金を募り、今回の形にこぎつけたなど結果的にガチな作りになっている。

 主人公はプロゲーマーになるために両親の元を去り、一人暮らしをしながらPC房にて対戦を繰り返す。しかし一向に勝ちが見えてこないという状況に陥った中で、仲間たちに出会っていき中二病っぽいアクセントの効いたライバルのトップチームに挑むようになる…みたいな話。

 ちなみにオレはe-sportsシーンはさっぱりで、valveの「Dota2」プロモーション込みのドキュメンタリー「Free 2 Play」タイトル通り無料でyoutubeに公式で公開されている)くらいの知識しかないのだが、韓国シーンのリアリティがどんなもんかはわからんのでこの辺は識者の感想を待つかんじで…女の子のプロゲーマーキャラがかわいいはかわいいが妙にあか抜けないファッション(っていうか主人公サイドのファッション全般)なあたりにそことないリアリティがあると思ってるレベルです。

BoyGoesToSpace & WEAVE

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 以前にもちょっと書いたけど、アートアニメーション側が映像表現を進める一環にインタラクティブ性を作品に含めて見たいっていうのを例えばアカデミックな方面でアニメーションを制作・研究しているカナダの世界最大の機関がやったりしている。

 でもビデオゲームのサイドも「インタラクティブな体験」を突き詰める結果、ゲームメカニクスも多数のテキストやキャラクターによるシナリオも排してただ一つのアニメーションに触れるような…という作品はいくつかある。

 この2作はそんなインタラクティブ性に注力した、奇妙に楽しい作品だ。少年が宇宙を目指し飛んだ先には。男と女はどんな形で出会っていくのか。

GARDEN

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 今年遊んでいて随所で触れよう触れようと思いながら先送りになってる、注目のゲーム作家Daniel Linssen作品。普段はGame makerによる、ピクセルグラフィックによるミニマルな2Dプラットフォーマーなどを多く制作しているのだけど、本作は他のアーティストとコラボしたことでリッチなアートスタイルとなっている。

 Linssen作品は例えば闇の中で火の矢を撃って道を探る「Rougelight」というローグライクアクション(これも素晴らしいよ)を作っていた流れもあるのが、これもそのジャンル。だけど当然目を引くのはUIを極端に排し、ベクターイラストレーションと3DCGの境目を無くしたアートスタイルだ。

 まるで「風の旅ビト」をそのままローグライクにしたかのような、アンビエントなゲームプレイであり、シンプルでシビアな駆け引きがある。ショットとタックルで敵を倒し、次のステージへ進む鍵を開けていくのだが、弾には限りがあるし、タックルは使える時間がワンプレイで限られている。アートスタイルに特化していながらこのあたりの微妙な制限と駆け引き具合も「風の旅ビト」っぽいかも。

Emily is Away

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 例えば1980年代のPC環境でのダイヤル接続時代のBBSのやり取りを描いた「Digital: love story」 であるとか、90年代のPC環境による、過去の事件記録を単語を検索して追っていく「Her Story」などなど往年のPCの環境を使ったアドベンチャーが最近は見かける。2000年代のwindowsXPのチャットを舞台にしたのが「emily is away」だ。

 そのいずれも共通しているのは、単なる過去のテクノロジーや質感のリバイバルというだけではなくその当時のそのツールを通したコミュニケーションの、生々しく哀しいし、ちょっと笑っちゃう感じもある。意外なくらい青春な感じもあるし。

 「emily is away」でのエミリーとのチャットはマジで哀しい。それはこのムードを再現する細やかな演出にから生まれている。基本は相手の言葉に対して3択のいずれかの返答を選ぶダイアログシステムなんだけども、選んだあとキーボードの何らかのキーを押して一文字ずつプレイヤーがタイプしていく演出を取っている。いったん書いてからちょっと違うな、突っ込み過ぎてるかなと思ってまた消す、とかいうあたりなんてもうすごいよ。

 それにしても2000年代初頭から中盤までって、今から振り返っておおよそ10数年前ってのは、あの頃から振り返る十数年前の90年代80年代と違って微妙な感じだ。エミリーとチャットを行う前に自分のアイコンを選んでいくんだけど、その年で流行ったバンドや映画のアイコンが多い。グリーンデイの「アメリカンイディオット」とかタランティーノの「キルビル」とか、もうそんなに時間が経ってしまったのか?

 ありゃ?振り返るとなんか挙げてきた作品のPCの年代が10年ごとに上がっていく形になってるんだけど!ということで10年後いや5年後にでもtwitter、facebookなどを使った物悲しく笑えるADVをだな…

2件のコメント

  1. こんにちは。
    Off peakはsteam greenlightで見かけて気になっていたので、大変参考になりましたm(__)m
    ガジェット(綴りはgad G etだったかと)とクーロンは共に大好きな作品だったので、ぜひ訪れてみたいと思います。

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  2. >ガルメしあんさん
    やべーこの綴りのミスっぷり、EnglishでなくEngrishの領域からなかなか抜け出せませんわ。
    いくつかの作品はsteam greenlightにありますね。
    Off PeakはHD版が通ることを期待しております。

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